2010年08月05日

立川昭二「漱石と脳、そしてストレス」(文春文庫『片手の音』収録)より

 日本人は、比喩的にいうと、明治以前は「胸」や「腹」で考え感じていたといっていい。
 日本人が「頭」つまり「脳」で考え感じるようになったのは、明治以降のことである。日本における西欧型近代人の誕生である。その第一走者のひとりが、夏目漱石である。
 ・・・彼がからだの中でもっとも気にしていたのは、目鼻や手足でなく、やはり頭あるいは脳であった。

(『それから』における身体語の出度数、「頭」に「脳」をくわえると180で首位)

 漱石が言っているように、西洋医学の導入とともに、明治日本では臓器名のついた病名がはやった。肺病・胃病・子宮病などとともに、今日の精神病・神経症は「脳病」「神経病」といわれていた。なかでも明治後半からはやった病名に、今日の「ノイローゼ」にあたる「神経衰弱」がある。

 したがって、明治後半の新聞には「脳病院」の広告が大々的に出てくるようになった。また脳病の治療に効き目があるという薬の広告も目につくようになる。なかでも・・・「健脳丸」は人気商品となった。
posted by poka-risu at 00:00| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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