2010年06月20日

宮城道雄『声と人柄』より

私は人の言葉つきで、その人が今日自分に、どういう用向きで来たかということが、あらかじめわかる。
その人がどういう態度をしているかということも、自然に感じられるのである。
ある夏の暑い時であったが、或る人が尺八を合わせに、私のところに来たことがある。その人とは心易い間柄だったし、丁度その時は誰も居合わせなかったので、その人が上着を脱ぎ、はだかになって尺八を吹き出した。私はそれを感じていたけれども黙って合奏をしたのであった。そしていよいよ済んだあとで、私が今日のような暑い日には、はだかでやると大変涼しいでしょうなあ、と言ったらその人は驚いて、這(ほ)う這(ほ)うの体で帰ってしまった。その人は別に私を誤魔化そうと思ってやったのではなく、心易さからのことだったろうが、私の言ったことが当たったのであった。
posted by poka-risu at 00:00| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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